東京交響楽団第９２回新潟定期演奏会
2015年１０月１８日（日）１７時開演、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホール
【曲目】　
ブラームス：悲劇的序曲 作品81、
モーツァルト：ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219「トルコ風」、
ストラヴィンスキー：バレエ組曲「火の鳥」（1945年版）
【出演】
指揮：クシシュトフ・ウルバンスキ、
ヴァイオリン：ステファン・ジャッキーヴ、
コンサートマスター：グレヴ・ニキティン
【感想】
東響首席客演指揮者、３３歳の若きマエストロ、ウルバンスキの新潟デビューコンサート。
ベルリンフィルやニューヨークフィルなどにも客演するなど、世界的な活躍を始めている新進気鋭の俊英である。
ポーランド出身、長身痩躯の美男で、ショパンが現代に蘇ったようだ。マエストロのおっかけか、オルガン前の席には女性たちが多く陣取っていた。
イケメンの外見だけでなく、その音楽も、いや、その音楽こそ素晴らしかった。
最初のブラームスから圧倒的名演。濃厚で豊潤な小交響曲とも言うべき悲劇的序曲を、切れ味鋭く各声部を明瞭に提示しつつ、
うねるように歌い、ゴージャスに響かせ、しかも停滞することなく音楽がきびきびと推進される。
前首席客演指揮者だったルイゾッティのメンデルスゾーンの序曲の衝撃的新潟デビューに匹敵する「挨拶」であった。
次回以降で、ぜひブラームスの交響曲をウルバンスキ指揮で聞いてみたい。
続くモーツァルトのヴァイオリン協奏曲では、更に若い３０歳のジャッキーヴの自由自在な演奏を、ウルバンスキ＆東響は軽やかに支えた。
ジャッキーヴのヴァイオリンは、とにかく音が美しく、光輝あふれる高音から、太くゆったりと響かせる中低音まで、
卓越したテクニックの裏打ちもあって、清澄で優美なモーツァルト音楽を見事に表現しきった。
テンポも自在で、オケとの呼吸もぴったり合い、のびやかに歌うメロディーが心に染み通った。
これまた名演でブラヴォーが私のを含め多く飛んだ。
そして、休憩後はメインの「火の鳥」。ウルバンスキは東響の高水準の技量を遺憾なく発揮させ、
シンフォニックでダイナミックで、色彩感あふれる劇的音楽絵巻を展開した。
前半の弦を中心とするうごめくようなおどろおどろしさ。王女の柔和な踊りをしっとりと示す木管群。
一瞬の沈黙の後のピッコロの空気を引き裂くような一吹きで幕を切って落とされた激しい闘いの金管群と打楽器群の躍動感あふれる強奏。
音楽はその勢いのまま最高潮に達する。最後のトゥッティは印象的なスタッカートで刻み、怒濤のフィナーレを迎えた。
ブラヴォーの嵐。ウルバンスキは、がっちりと新潟の徴収の心を鷲づかみにした。
２０２６年までの長期契約を結んだ音楽監督ノットとともに、この若武者、貴公子ウルバンスキが、
東響の新たな時代を切り拓き、至高の音楽世界に私たちを連れていってくれることへの期待が高まる。
すごいことになってきたぞと、わくわくしてしまう。

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