渡邊順生デビュー40周年記念、チェンバロ J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」演奏会
渡邊順生デビュー40周年記念、チェンバロ J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」演奏会
2018年１２月２９日（土）１７時開演、東京オペラシティ近江楽堂
【曲目】 J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」
【出演】 渡邊順生（チェンバロ）
【感想】 東京滞在の中日で予定が空き、知人に紹介してもらって、縁もゆかりもない中で聴きに行くことにした。
初台は新国立劇場やオペラシティー大ホールなどは言ったことがあるが、近江楽堂は初めてである。
オペラシティーの３階にあり、新潟で言うとりゅーとぴあのスタジオＡといった感じで、百席ほどの椅子が並べられている小ホールだ。
演奏前も休憩時にもチェンバロの調律が続けられている。繊細な楽器で音程も崩れやすいのだろう。
１５分の休憩を挟み、前後半各４０分で全曲が演奏された。
２列目中央という絶好の席で、間近でチェンバロの音をサロン的に楽しむことができた。弾かれる弦の音が輝かしく美しい。
渡邊は淡々と、外連味なく演奏を進めていくが、曲間をほとんど空けずに次々と変奏が繰り広げられるうちに、音楽の濃度と熱量がいつのまにか増大していく。
壮大な宇宙空間に星々がきらめき、虚空の暗さと冷たさの中に、希望の光が散らばっていくようだ。
人間の甘美な抒情をはねつけるように、厳粛で冷酷な宇宙は広がるが、そこにこそ真の救いがあるように思えてくる。
なんと人間はちっぽけで有限な存在であろうか。
そして最後に、冒頭の感傷的とも思える美しいメロディーが再び奏されて全曲が終わった。
宇宙の旅から地上に戻ってきたような安堵感と寂寥感とが心を静かに満たす。
これが私にとっては２０１８年を締めくくる演奏会となる。
こういうロマンティックでない音楽もいいものだとしみじみ思う。